「愛してる」、その続きを君に
真っ青な海。
そこに弾ける太陽の光。
今日はこのふたり、辻本雅樹、綾乃夫妻の結婚式。
いい天気でよかった、と目を細める。
長年豊浜で医療を担ってきた市原が、高齢のため診療所を閉鎖すると聞いた雅樹は、大学病院を辞めてこの地に戻ってきたのだった。
順調に行けば、いずれはそれなりの地位を得られたであろう道を捨て、綾乃とのぞみを連れてここで町のために人生の根をおろした。
大学病院勤務時代に結婚した彼らはお互い何かと忙しく、籍だけを入れていた。
時間にゆとりができた今、こうして式をあげることにしたのだという。
ありがたい、と信太郎は心底思う。
罪を犯して服役した自分が神父を務める教会など、この閉鎖的な町ではまず受け入れられない。
礼拝にもほとんど誰も訪れない中、雅樹の一家だけは毎週日曜日には教会に足を運んでくれた。
その上、「おまえの教会で式をあげたい」、とまで言ってくれた。
初めて彼は式をとりもつ。
心地よい緊張感があった。
賑やかな朝食をすませると、信太郎は教会の庭に出た。
春にしてはまだひんやりとした風が、少し緊張気味の自分にはちょうどいい。
そして目を閉じて、ある人のことを想う。
今でも彼女を想うと胸がかきむしられるように痛む。
だが、これも自分に課せられた償いなのだと、忘れてはいけない痛みなのだと言い聞かせている。