「愛してる」、その続きを君に
「まだあいつ小4なんだぞ。男と二人で、なんて…」
「男、だって」
ププッと夏海が噴き出すと、信太郎が雅樹の肩を抱き寄せた。
「いいか、おまえは親父じゃないんだから。ま、遥が夢中になるんだから、池田ってやつはいい男なんだよ。俺みたいに」
「それは余計心配だなぁ」
「おい!どういう意味だよ。だいたいさ、雅樹は遥のことになると必死になりすぎ」
「いーや、そんなことない」
「このシスコンめ」
「信太郎に言われたくないよ。姉貴大好き人間のくせして」
「はぁ?そんなんじゃないって」
「まぁ、5つ年上であんなに美人な姉さんがいたら誰だって気になるよ」
へへん、と笑って雅樹は舌を出した。
「おまえにはかなわないって」
負けじと顎を突き出す信太郎。
「なんだよ」
「おまえこそなんだよ」
「ああっ!もう、うるさい!私からしてみれば、二人ともシスコンよ!」
夏海はうっとうしそうに何度も首を横に振った。
ゆっさゆっさと電球の入った提灯が揺れる中、履き慣れない下駄の鼻緒が親指の付け根に食い込んで痛む。
夏海の歩くスピードが落ちた。
それにいち早く気付いたのは雅樹だった。
「大丈夫?」
「え?なにが?」
せっかく盛り上がっているのに、そう思って夏海はとぼけてみせた。
「足、痛いんだろ?」
「ううん!平気」
そう言ったが、軽快な下駄のリズムを刻むのはもう無理だった。
先を歩いていた信太郎も、彼女を振り返った。