「愛してる」、その続きを君に
担任の山下や父の前ではああ言ったものの、自分がどうしたいのか、まだはっきりはわからない。
ただ家を離れたくない、それは確かだ。
父と祖母を残して出て行くことはできない。
それは一種の罪悪感にも似た感情だった。
雅樹は医学部を希望し、周りの友達も具体的な志望校をいくつかあげている。
正直羨ましかった。
進むべき場所が見え、そこに向かう道を開拓していけばいいのだから。
夏海はそうではない。
霧の中、ぼんやりとした月明かりを頼りに足を進めてみるものの、右も左もわからない。
ゴールなんていらない、ただこんな曖昧な先の見えない世界から出たい、それだけだった。
信ちゃんはどうするんだろう…
ふと彼の顔が目の前にちらついた。
「いかんいかん」と夏海は頭をコツンと叩き、「関係ないじゃん、あんなやつ」と呟く。
でも宇宙開発っていったら工学部?理学部?何学部になるんだろう…新聞の小さな字を目で追いながら、無意識のうちにそんなことを考えていた。