「愛してる」、その続きを君に
薄暗い境内の裏で、三人は古びたベンチに腰掛けた。
夏海が真ん中で、右が信太郎、左が雅樹。
いつもこのポジションだ。
「マーくん、この前の模試すごかったね。校内で1番だったじゃん。県内でも10位!これでW大の医学部も余裕だね」
「たまたまだよ」
「たまたまであんな点数取れないよ?」
「いやぁ、これからだよ。どうなるかわかんないって」
雅樹は自信なさげにポリポリと額をかいた。
「W大だったら一人暮らしだよな。そうなったら、女を自由に連れ込めるじゃん」
身を乗り出した信太郎の視線が、夏海を通り過ぎて雅樹に向けられた。
「あのなー信太郎。なんでそういう話になるんだよ」
「ほんと。やらしいわよ、信ちゃん」
呆れた二人の顔を見て
「どこが?」と悪びれもせず、背の高い青年は持て余すかのように長い足を組み替えた。
「それより信太郎、おまえはどうするんだよ」
「わかんない。ほら俺っていい加減だろ?それなりに適当に大人になって、適当に暮らすよ」
ケタケタと三人は笑う。
「信ちゃんらしい」
「そんなこと言わずになんとかしろよ」
「無理だって。この頭じゃ、どこの大学もいらないって言うって。間違いなく」
「中学の時はそこそこ頭よかったじゃん?」
夏海が割って入る。
「だろ?勉強しなくてもそこそこ頭良いんだよ、俺」
「さっきはどこの大学もいらないって言うほどの頭だって言ってたくせに。本当にいい加減なんだから」
夏海の言葉に、うんうん、と雅樹も頷く。
「でもまぁ高校卒業まであと1年半あるし。なんとかなるだろ」
変に真剣な顔できっぱりとそう告げると、彼はウン!とうなって立ち上がった。
「風の吹くまま気の向くままに!」
そして天高く右手を突き上げた。
「やだ、やっぱり適当」
「ほんとだ」
「こらこら、おまえら。聞こえてるんだよ」
そう言って腕をブンブン振り回すと、信太郎はポツリと「腹減ったな」、と呟いた。