箱庭ラビリンス
すぐには無理だけれど、支えてもらえている分、私も進もうと思った。
ここからが私のスタートだ。ようやく始まる。
上手く歩けなかったとしても大丈夫。今なら思える。
「あ……あの、望月さん。ノート、返却されたから……」
怖い事はまだ変わらないけれど、愛想よく上手くは喋れないけれど、変わりたいとあの日、彼に吐き出したんだ。
吐き出すだけでは何も変えられない事を知っている。自己暗示も無意味だ。
「……ありがとう」
差し出されたノートを恐る恐る受け取り、伝える。
顔を上げれば待っていたのは私を拒絶する目ではなかった。唖然、それから安心したような表情、そして、
「――……どういたしまして」
笑い、述べられる言葉。
ちゃんと受け入れて歩み寄れば、拒絶なんてない。拒絶しなければ、歩み寄る事だってできるんだ。
私はそう信じる。