箱庭ラビリンス
暫く立ち去るべきかの問題を考えていると静かに扉が閉まった。
「……――」
余計な事だったかと肩を落としたが、ススッとドアの隙間から先程の紙が出てきた。
また何か書いてる……?
音を立てないように開いてみれば整った字が二つ目。
『こうやったら話せる?ずっと望月さんと話してみたかったんだ』
扉と紙を見比べて少し考える。
愛想笑いも本当の一対一も嫌いだけど、壁一枚隔てての筆談なら大丈夫な気もしていた。
何より彼に興味があると言えば矛盾を孕むだろうか?
『この状態なら私も君と話したい』
けれど、飽きることのない音を奏でる彼と心の奥の奥、見落としてしまうくらい小さな、話したいと言う気持ちを見つけてしまったんだ。
どうしても知らないふりができなかった。