箱庭ラビリンス
第九楽章【優しい時】
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それは登校時に起きた突然の事だった。
「わきゃぁ!!」
「ひぁ!?」
叫び声と共に落ちてきた冷たい何かに思わず声を上げた。足を止め、肩を竦める。
目に映るものが青い。手も制服も髪も真っ青。なんだこれ?
「あわわ!ご、ごめんなさい!」
パタパタと走って現れたのは、顔面を蒼白にした女子生徒だった。
二つに結ばれた髪を激しく動かし、目の前で頭を下げた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!手が滑ってバケツごとひっくり返しちゃって……」
仕切りに謝ってくるので見れば、私の足元にはバケツが転がっていて、ドロリと青い液体が溢れていた。
どうやら絵の具を被ってしまったようだ。