箱庭ラビリンス


ちょうどその頃も、以前から、家に早く帰ってもいい事はなく時間潰しの方法を考えていた。


フラリフラリと学校中を徘徊して部活をしている姿を見たりしても時間は減らず、暇を持て余していた。何をしようかと。


そんなときに立ち寄った音楽室で彼を、桐谷音弥を見つけた。


それまでも表彰などよくされていたから知っていたけど、今も変わらない認識、『ピアノで凄い人』をこの身ではっきりと実感した瞬間だった。


まさか、音楽室で弾いているとは思っていなくて第一にビックリした。



誰かが引く音を近くで聴くのは幼少期依頼だった。


もっと近くで聴きたい。


思うも、弾いている人が人である以上、私は近づけない。近づきたくなかった。


ならば。この外でこっそり聴いていよう。


そう、思ったんだ――。



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