箱庭ラビリンス
触れてはいけない所に触れてしまった感じは、私でもよく分かる。どうにかして、この空気を変える努力をしなければならないと頭の回転を早くする。
焦る私を余所に、彼は徐に立ち上がり、ゆっくりした歩調で壁の方に歩みを進めた。
辿り着いたのは小さな楯の前。それに触れた。
「――……一つだけ」
彼は言う。
「一つだけ、こんな時だけど君に言わないと……聞かないといけない」
それはとても真剣な声で、私も身構えてしまう。
彼は触れていた楯を手に取り、そのままそれを此方に向けるように振り返った。
「ナナギって名乗る子供に出会った事はある?」
手に持たれた楯には『七霧音弥』と書かれていた。