箱庭ラビリンス


暫し動揺して、動揺を隠しきれないままに小さな声を上げた。


「さ、さっきのはデタラメ……?」


「あはは。あれは私が学生時代に思ってた事。……まあ、今だって思ってるけどね」


いつかの日を思い出すかのように遠くを見つめながら、ポツリと感情を落とす。


雑誌をパラパラと捲りながら、真剣な話じゃないかのようにしているが、きっとこれは菜穂姉自身の真剣な話。


「今も大人になれてないけど、学生の時はもっとそうだったの」


「……」


「何となく進められるままに進んで、自分で自分の首を締めながらも生きて……」


フッと息を吐き、自嘲するかのように笑った。


「この仕事に就きたかった訳じゃないし、誇りを持ってもなかった。でも……」


一端言葉を切り、私の方をジッと見つめて言った。ページは閉じられた。


「未来ちゃんがこうやって前を向いてくれたから、ようやく私は心の底からこの仕事をしていて良かったと思えたわ」


ありがとう。ともう一つ付け足した。


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