箱庭ラビリンス
話を追った先に彼がいると信じて、歩み寄る。
「いつから気付いてた?」
「クラスで名前を知ってから。確信は無かったけど、話している内に確信に変わってた」
瞬時に、全部そのせいなのかと、彼が視界に入るようになってからの情景を思い浮かべた。
彼が気付けて私は何故気付けなかったのか。悔しくなる。
そして、何故もっと早く聞いてくれなかったのかと。悲しくなる。
キュッと唇を噛み締めたタイミングで、まるでその単語が壊れてはいけないものかのように優しげな声で問われた。
「約束、覚えてる?」
「約束……?」
首を傾げると、彼は頷いた。
「そう、約束」
もう一度言う。確認のように。噛み締めるように。