箱庭ラビリンス


ナナギくんとの約束。私は約束をしたのだろうか。


あの日、出会ったあの日に。


「覚えてなくてもいいよ。俺が勝手に覚えてただけだから」


「でも……」


それでも思い出したい。思い出せる筈なんだ。


『……約束しようか』


……そう、真正面にナナギくんがいて、小指を差し出して指切りして……それから?何て言った?


「っ、なんで……」


思い出したいのに思い出せない。記憶が混沌として引っ張り出せない。引き上げるには足りない。


何故、どうして私は君に応える事ができないのだろう。悔しい。


すごく悔しい。


「教えて……くれないか?」


絞り出すように言えば彼は一つ間を置いて言った。


「『いつか一人で来れるくらい大きくなったら、この日にまたここで会おう』」


その時、彼とナナギくんは確かに重なった。


< 185 / 194 >

この作品をシェア

pagetop