箱庭ラビリンス
ナナギくんとの約束。私は約束をしたのだろうか。
あの日、出会ったあの日に。
「覚えてなくてもいいよ。俺が勝手に覚えてただけだから」
「でも……」
それでも思い出したい。思い出せる筈なんだ。
『……約束しようか』
……そう、真正面にナナギくんがいて、小指を差し出して指切りして……それから?何て言った?
「っ、なんで……」
思い出したいのに思い出せない。記憶が混沌として引っ張り出せない。引き上げるには足りない。
何故、どうして私は君に応える事ができないのだろう。悔しい。
すごく悔しい。
「教えて……くれないか?」
絞り出すように言えば彼は一つ間を置いて言った。
「『いつか一人で来れるくらい大きくなったら、この日にまたここで会おう』」
その時、彼とナナギくんは確かに重なった。