箱庭ラビリンス


そこに、ナナギくんがいる。ずっと会いたかった人。言いたい事は何だ?先ず言う事は?忘れていてごめん?


「……」


そう、謝りたい。けど、謝るよりもっと……。


考えて行動に移すよりも先に、彼は私の先回りをした。諦めきったような表情を私に差し出した。


「所詮は子供の約束だけどね」


そんな風に言わないで。君は覚えていたじゃないか。ナナギくんを想って生きてきた筈なのに私は忘れていた。


「っ……」


そうじゃない。後悔するんじゃない。もっと……


「また、『未来ちゃん』に会えたからそれでいいんだ。俺は」


「っ……っ……」


泣くな。泣くんじゃない。もっと別にすべき事は……。



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