箱庭ラビリンス
目を擦り、自分の手を自分の手で握り込む。
「私は……!「ずっと」」
わざとと感じてしまうタイミングで彼は私の言葉を遮った。一つ声を大きくしてまで止めた。被害妄想かもしれないが、そんな風に思わざるを得ない。
思ってみたところで、私は遮らない。聞くだけ。言えるようになるまで待つだけ。
「ずっと、また会えたら言おうと思ってた事があるんだ」
この、言いたかった胸に留めて一杯気持ちを込めて言うだけ。
「『未来ちゃんのおかげでピアノが好きになれた。――ありがとう』」
そう、感謝の言葉。彼と同じ言葉。吐き出せ。
「『――ナナギくんのおかげで、私は強くなれた……っ、ありがとう』」
顔を上げればナナギくんは笑っていた。その時だけはナナギくんを認識して、つられるように私も笑っていた。