箱庭ラビリンス
余韻に浸るかのように暫くは二人とも話そうとしなかった。
ナナギくんにまた会えた。それは素直に嬉しい。
だが、私は彼を、桐谷くんをもっと知りたい。知りたい。
「君はどうしてナナギと名乗ったんだ?」
その欲求だけが今の私にはあって、率直に聞いてしまっていた。
彼は戸惑った表情を見せるも、息を吐くかのように言った。
「七霧律の弟は名前すら覚えてもらえなくて、名字だけ知っていた人達は弟を呼ぶときにナナギって呼んだんだ。さも愛称を付けたかのように」
同じだ。菜穂姉もこんな風に遠くを見てた。思いを抱えていたんだ。加えて、投げやり気味な口調。
思い出したくないのかもしれない。そう思ったけど私は止めなかった。