箱庭ラビリンス


猫と接している内に多少ながら朝から落ち着かなかった気持ちも落ち着いていくのを感じた。


学校前に来れば、いつもより遅くなった為か人が多い。


……人混みは苦手。


早足で突っ切ってしまおうとした時だった。


「おはよう」


決して今まで話すことのなかった彼が私に挨拶をしてきた事に気づくのには数秒要した。


目を合わせないままで立ち止まり、声を絞り出そうとするも上手くできない。まるで自分のものじゃないかのように。


周りに人がいるから先日のようにはならないと思いたいが、このままではまた不快な思いをさせてしまう。


「っ…「あ、ちょっと動かないで」」


「!!」


出そうとした出ない声を遮られたのと彼が一歩ちかづいたのとでの相乗効果で体が跳ねた。




< 19 / 194 >

この作品をシェア

pagetop