箱庭ラビリンス
彼は彼で私は私。
似ている。それだけでは片付けてはいけない。
「兄ちゃんはピアノを続けて、俺は上手くはなれなくても未来ちゃんのお陰で楽しんで弾いてた。確かに楽しんでた」
ううん。私のお陰じゃない。何もしてない。出来てない。
「新しい家族とはあまり上手くはいっていなかったけど、皮肉な事に兄ちゃんが交通事故に巻き込まれた後に上手くいきはじめた」
彼はとても苦しそうで、力なく笑って、私はそれを想像すら出来なくて。
「泣かなかったから、兄ちゃんの代わりになろうとしてたから、家族皆に怒られた『音弥は他の誰にもなれない』って」
だから私は彼を……
「新しい家族に踏み込むのを皆躊躇ってた。それだけで、踏み込むだけで良かったのにね。後から分かるなんて皮肉だよね」
きっとそれでも泣かなかった彼に手を、伸ばした。