箱庭ラビリンス
伸ばした手に、彼はすがるように手を伸ばした。手を絡めた。私を抱き締めた。
知ってる。こうされると安心するのを知ってる。
だから、躊躇わずに君を抱き締め返したんだ。温かい、其処にいる、確かな温もりを感じた。
「誰にも言わなかった。言えなかった」
「……うん」
私はいつも自分の事で手一杯で、忙しくて。
「疎ましかった事も、寂しかった事も、嫌いだった事も、感謝してる事さえ」
「……うん」
彼はそんな私の拠り所で。
「今でも夢に見るよ。兄ちゃんが事故にあったあの光景」
だから、今度は私の番であってほしい。