箱庭ラビリンス
第一楽章【手を伸ばした少女】
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私は人に好かれていないと自負している。
愛想もない人間には誰も愛想など振り撒いてはくれないのだ。
そうして愛想の無い人間が切り捨てられて、表面上だけの仲良しごっこをした人間でこの教室は形作られ循環している。
今日もそうやって廻る。
「も、望月(もちづき)さん」
「……」
最も、人……特に男に対するそれも持ち合わせていない。
「プリント、出してくれないと困るんだけど……」
鞄から提出するプリントを出し、勝手に取れと言わんばかりに机の上に置いた。
「あ、ありがとう」
「……」
返事もせずに溜め息だけを吐いた。クラスメイトに対してではなく、もう癖のようなもので意味はない。
強いて言えば疲れていたから。か。