箱庭ラビリンス


何も掴めなかった手は酷く汚く見えた。


『未来。これは父さんと母さんには言っちゃだめだよ』


汚い。穢らわしい。


最低最悪な出来事。


触れられたくない。怖い。なのに……


「望月さん!」


アイツガワタシニフレタ。


「!!ふれ、る、なっ!!」


「っ」


パシッと乾いた音が鳴り響く。


触れられた手に虫が這っているかのように悪寒が走る。ザワザワと。


「女なんかじゃない!僕を女だなんて言うな!」


頭が回らない。いや、回ってる?


グルグル。グルグル。視界も歪み始めた。


「僕は、アンタの玩具なんかじゃない……っ!」


叫びが響くように脳が揺れ、意識が薄れた――……


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