箱庭ラビリンス


覗き込むように問い掛けてくるから一歩下がる。下がって下がって……


「駄目。逃げないで」


鳥肌が立つ。


「や、めっ……!」


だが振りほどけない。


そうだ。昨日もこうして触れられた。でも振り払えた。なのに今日は振りほどく事すら出来ない。


鎖のように手錠のように。それはまるで、まるで……


『言ったらどうなるか、分かるよね?』


「いっ!やぁぁぁぁ!?離せ!離せ離せ!」


「――っ!」


聞こえない。何も聞こえてこない。開いた片方で抵抗しようとしても捉えられる。体を後ろに遠ざけても逃げれない。


『叫んじゃダメだよ。未来はいい子だからできるよね?』


「やだ!出来ない!出来ないよ!止めて!離して!僕から離れろ!」


「っ……未来ちゃん!」


泣きそうな声と共に無理矢理私は包み込まれた。


一瞬、動きが止まるも全身からくる悪寒に我慢が出来なくなりまたもがく。彼だと分かっても同じだった。





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