箱庭ラビリンス


力なく身を捩って声を枯らす。


「ふ……うぅ……僕は……っ!女じゃない」


「君は女の子だよ」


耳元で聴こえる声はピアノの音のようだった。優しくて、温かくて、寄りかかりたくなる。けど、そんな事してはいけない。


「ちがう……女じゃない。女だから悪いんだ」


「悪くない。何も悪くないよ」


音が私の中に入って徐々に怖いものを中和していく。知ってる。彼は悪い人でも怖い人でもない。


「っうぅ……だって!だってだってだって!女だから、女なのにって皆言うじゃないかっ!」


音は、私の奥の奥まで届く。彼は、敵でもない。勇気になる音をくれる。


もがいた拍子に自分の腕が頭に当たった。バサリと頬に、肩に触れる髪。黒い色を視覚が捉えた。


どうしても捨てきれなかった想い。


「私だって……!可愛い女の子でいたかった……っ!」






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