箱庭ラビリンス
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放課後を告げる鐘が鳴って十分は過ぎただろう。
そろそろいい頃合いか……。
鞄を掛けて立ち上がり、誰にも声を掛けることなく廊下へと足を進めた。
部活に行く人、友達と廊下で話す人、今から帰る人。色々な人の脇を抜けて階段を上り、目的の場所へと淡々と足を進める。
進めるにつれて人が少なくなり、聞こえてくるのは窓の外の喧騒としたの階から聞こえる声。
それと……微かに聴こえるピアノの音。
この階にこようと思うのは物好きだけ。あるのは音楽室や視聴覚室、空き教室だけで授業でしか使わない教室ばかり。おおよその生徒は放課後に用がないのだから。
そんな中でも私がいるのは音楽室を一点に目指していたから。
近づくにつれて大きくなるピアノの音。既に他の雑音など耳に入っていなかった。
足音すら立てないように細心の注意を払いながら、音楽室付近の壁に背を預け、耳を傾けた。