箱庭ラビリンス
彼に背を向けながら、髪に櫛が通る感覚にくすぐったさを感じていた。
俯きながらも彼の声に耳を傾ける。
「やっぱり、望月さんは人に触られるの嫌な人だったんだね」
「……どうして」
「動物の毛を取ったときに確信した」
それもそうかと納得せざるを得ない。気付かない方がおかしい。
「俺は大丈夫?」
「少し……君は……~~」
人と話すのは得意じゃなく、上手く言葉を組み立てられない。
携帯を取りだし、文字を打ち込んだ。こんな風に、使わない携帯が役立つとは思いもしなかった。
『少し怖いけど、君なら平気みたい』
「……そっか。それはよかった」
返答が聴こえ、後で彼がクスリと笑ったのが分かった。