箱庭ラビリンス


一通り鋤き終えれば、また元の距離へと戻る。


「……変じゃないか?」


前髪を触りながら、その隙間から覗いて問いかけた。


「うん、大丈夫。可愛い」


すぐにそう言い、笑いかけてくれる。


「……ありがとう」


ずっと短い髪だったからどうしても落ち着かなかったのだが、彼に言われると落ち着く。可愛いと言われても嬉しいとさえ……


「まだ授業終わらないし、ピアノ弾いててもいい?」


ああ、そう言えば彼は先の事を一つだって問い掛けてこないなと微笑む姿に思う。


きっと、踏み込んできたりしないから心地良いのかもしれない。久々に落ち着ける場所に降りれた。そんな気分だった。


私は、彼の問いにコクリと頷いたのだった。




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