箱庭ラビリンス


買い物カゴを手にとり、もはやお馴染みになったコーナーへと足を進める。彼と一緒に。


一応は買い物をする旨を伝えたのだがやはり帰ってはもらえなかったのだ。


仕方がないので気にせず次々にカゴに求める物を入れていく。


「……望月さん、いつもそんなの食べてるの?」


聞かれたので頷くしかない。


ああ、普通の家じゃないと思われるか。と後悔の念に駆られたが今更だった。


また一つ買い物カゴに入れる。


そうして二つの商品のどちらにしようかと吟味していた時、彼は何を思ったかこう言った。


「――よかったら家に食べに来ていいよ?」


言葉に驚いて、思わず目を見開く。


桐谷音弥と言う人間が益々分からない。当の本人は「?」と首を傾げている。


だが、まあそれが彼の人となりかと思うことにした後、断りの意を示した。


『そこまで君に世話になれない』


と付け足すように示せば、彼は「そっか」と言った。私はまた食料を吟味し、適当にカゴに入れたところで会計を済ませた。




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