箱庭ラビリンス
私が口を閉ざしても、菜穂姉は更に追求をしようとする気配はない。別の話には変わるが。
「さっきの子、温かかったでしょ?」
コクリと頷けば、また話だす。
「未来ちゃんにはそれが必要なんだと思う。温もりに触れることは怖いかもしれないけど大切なの。何も、今すぐじゃなくてもゆっくり、ああやって触れてほしいの」
「……」
「……冷たいままだと、人は生きていけないわ。一人で生きるのは到底無理な話だもの」
そう。私だって分かってる。こうやって菜穂姉と居ると一人で生きていけない事を感じるんだ。痛いくらい分かってる。けど……
「ま!とりあえず、ある人と触れあうのが当面の課題って事で」
「……難しいな」
「だいじょーぶ。何とかなるなる」
一瞬しんみりした空気も、菜穂姉自身によってまた変えられたのだった。