箱庭ラビリンス
目を何度もパチパチさせる。
「あ、っと。思わず」
彼は申し訳なさそうに手を引っ込めたが、私は触れられた袖を、自分の手を見つめていた。
「……――」
――変わらないと。いつかがあるのはきっと今。彼のように優しい人になりたい。
次第に遠くなる腕。その袖を少し掴んだ。
「えっと……?」
変われ。変われ。変わるんだ。
念じるかのようにギュッと目を瞑った。
「――て、手を。貸して、くれない、か?」
継ぎ接ぎの言葉。それでもしっかりと彼は聞き取ったようで、微笑みながらも何も言わず手を差し出してくれた。
なのに、また怖さが生まれる。