箱庭ラビリンス


電気も付いていない薄暗い中にそれでも映える姿。


あの子が弾いているなら暇潰しで此処に居させてもらおう。


気付かれないようにこっそりと客席に座れれば良かったのに、慎重に相手の動向を見てるばかりに、段差で足を踏み外してしまった。


「わ、きゃ……!」


倒れずには済んだけれど、声をあげてしまったために、顔をあげたときには演奏したままの姿勢で止まって、目を丸くしている男の子と目が合ってしまった。


「う……あ、ご、めんなさい……っ!邪魔し……「邪魔じゃない。けど……」」


「けど?」


「聴いても楽しいものじゃないと思うよ」


「っそ、そんなことない!」


最初に叫んでしまっていた。


だって……今にも泣きそうだったから。


恥ずかしさから手を前に組み俯いた。それでも後少し。


「そんなことない……と、思う……」


ポツリと呟いて相手の顔を覗き見れば悲しそうに、でも嬉しそうに笑っていた。


「じゃあ、聴いて?」



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