箱庭ラビリンス


おずおずとしながら前の方の席につけば、そこからは指がよく見え、まるで指が踊っているようで、体の内からワクワクとした感情が競り上がってきた。


人があんな風に弾けるんだ。私と同じくらいの年の子なのにすごい。魔法だ。


終わった頃には我を忘れて手を叩いていた。


「ありがとう。えっと……君一人?」


「ううん。お母さんと……もうすぐお父さんになる人と一緒」


そこで、風船がしぼむように気持ちが抜けていくのが分かった。


すると、手に招かれる。ステージに上がり彼に近づく。


「何?――ふ、わっ!?」


近づけば決して大きくない手で頭を撫でられ、ビックリして目をキツく瞑った。


「大丈夫。きっと上手くいくよ」


「……え?」


不思議と、疑問。





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