箱庭ラビリンス


どうして初対面なのにそういう事が言えるのか。間違いなく私が不安に思っている事だった。


撫でられるのをそのままに、視線を上げる。


「なんで?」


「人の事には敏感……だからかな?」


例え知らない相手でも気付いてくれた事が嬉しくて顔を綻ばせてしまう。この人ともう少し話してみたい。と撫でられた頭に触れながら思う。


「名前……名前は?」


彼は質問に戸惑う素振りをチラつかせて、答えてくれるのには数秒掛かった。


「……ナナギ」


「ななぎ?」


「そう。ナナギ」


変わった名前だと思ったが言わなかった。代わりに次は私が答える。


「私はね、望月未来」


「……ごめんね。フェアじゃなくて」


「……?」


言葉に理解が出来なくて首を傾げると「何でもないよ」と視線を反らす。けれど、そんな事は些細な事だった。



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