箱庭ラビリンス
喉が渇く。口がカラカラだ。
周りに誰もいない面と向かった一対一は私が最も苦手とする状況。
彼と絶対に鉢合わせしないようにしていたのに。音が籠っていても踏み込まないようにしたのに。
「望月さん?」
「っ――」
彼が私を覗き込んだとき硬直は解け、反射的に突き飛ばしていた。
驚く顔は水に浮かんで揺らめく。
「ご、めん……?迷惑だった?」
戸惑いと一緒に謝られ、同時に静かに自分の頬に温い何かが伝ったのに気づく。
泣いているのは明白だった。
気が付けば涙を拭わないまま彼に背を向け、出せる限りの力で走りだしていた。