箱庭ラビリンス
落ち着きを取り戻した頃には外は真っ暗で、音楽室には灯りが灯る。
こんな時間までいて大丈夫なのかとも思ったが、野球部のであろう金属音が響いていたからいいのだろう。
寂しく感じる音楽室で、ようやく言葉を紡ぐ。
「突然、ごめんなさい」
現在、私はピアノの椅子に座っていて、彼が適度な距離を取り、引っ張ってきたパイプ椅子に座っている状態。
顔を見ることはどうしても出来なく、握った自分の手の甲を見ていた。
ゆっくりゆっくり呼吸をする。落ち着きは取り戻しているが、まだ手は震えてる。指先が冷たい。
これから私はどうすればいいのかと不安で。この彼との空間をどうすればいいのかと困惑していた。
私から声を上げるのは躊躇われた。
いつまでも思い浮かぶのは、先の光景だった。