箱庭ラビリンス
数秒、数分。どれくらいだったのか分からないが、彼が息を吸う音を聞いた。
「何があったか聞いてもいい?」
言葉をパンクしそうな頭で理解した後、控えめに掛けられた問いに答えを返した。
「っき、聞いても楽しい話じゃない……から」
「言えない訳じゃないんだよね?」
彼の言葉にハッとする。
『言えない』かつて、どうして泣いていたのかと言う問いに返した答えを思い出す。
言えないと言わない。頭にすらなかったと言うことは聞いて欲しかったんじゃないのか?たとえどんな結論を生もうとも。
結局私は、聞いて欲しいだけの子供だったのかもしれない。
「聞きたいから聞かせて。じゃ、駄目?」
負荷に感じない言葉に、思わず涙混じりの言葉で返してしまう。
「……君は、お人好し過ぎるよ……」
「まさか。そんないい人でもないよ」
ようやく顔を上げると彼は微笑を浮かべていた。