箱庭ラビリンス


「母さんが離婚した事で、兄とは勿論父親とも関係を断ったんだけど、今日また出会って……それで……無我夢中でここに……」


意思に反して私の口はもう限界のようで、固く結ばれてしまった。


「その事、お母さんは……」


……その筈なのに、彼の問いには答えろと口が動く。


「知ってる。最初は信じてすらもらえなかったけど」


兄は外面だけ見れば“いい子”だったから、当然と言えば当然。用意周到で賢かった。


だから、血の繋がる母さんでさえ私を嘘吐きだと呼んだ。


「最終的には信じて貰えたけど、母さんとは暮らしたくなかったから、叔母さんと従姉妹に協力してもらって今まで来てる」


思えば、叔母さんもそうだが、菜穂姉には特に世話になっていた。彼女は兄の事を信じてくれて色々と掛け合ってくれたのだから。


中学生など、意思はハッキリしていたとしても何もできないのだから、彼女達がいなければ今もきっとあのまま耐えるしかなかった。


私は弱い生き物で、いつだって救いを欲していた。



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