箱庭ラビリンス
昔の事を一気に思いだし過ぎて、クラリと頭が揺れた。
「……ごめん」
けれど彼がそれを支えるように私を抱きしめた。生きてる音が聴こえた。
「思いださせてごめん」
小さく首を横に振って、彼の制服を少し握る。怖くない処か落ち着いていて、それが不思議で嬉しくて堪らなかった。
離れる事無く彼が耳元で私に囁く。
「……家まで送るけど、大丈夫?」
「ごめんなさい。ありがとう。大丈夫だ」
遠慮なんてものは無かった。それ程切羽詰まっていた。言うならば、この腕からすら離れたくはなかった。怖いんだ。
それでも、離れなければならないのは至極当然だった。離れてまた距離を保つ。
「根本的な解決は出来ないかもしれないけど、出来る限り協力するから」
「……君はとことんお人好しだ」
「まさか」
“多分それは望月さんにだけ”先とは違う答えが返ってきたのを気恥ずかしさから聞かなかったフリをした。