箱庭ラビリンス
彼の話をまた菜穂姉にする。と言っても、今日の事を話すわけにもいかなく聴かせてくれるピアノの曲の話を身振り手振りでする。
伝わっているのか分からないけれど、菜穂姉はちゃんと聞いてくれていた。
そんな菜穂姉が好きだった。だから、あの日私は本気で彼女が家族だったら。なんて思った。
馬鹿な事は重々承知だった。
……今だって変わる事のない馬鹿、か。
縋って縋って。記憶ばかりを大事にしているのだから。
「未来ちゃんがそんなに熱心になるなら、私も聴いてみたいなー」
音楽分からないけどね。なんて言って笑う。
それに、ピアノも上手だけど優しい人なんだよ。と内心で呟いてみるもこれから何もない事を祈るばかり。杞憂を望むばかり。
崩壊の手前、私は動けずにいた。