箱庭ラビリンス
第六楽章【孤独の望み】
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『何言ってるの。あの子がそんな事する筈ないでしょ』
『本当に本当なの!助けてよ!』
『はいはい。ご飯だから手を洗って来なさい』
『……嘘じゃない。嘘じゃないんだよ……』
思い出すのはそんな会話。その日から多分憎かった。信じてもらえなくて、穢らわしい事が増えるばかりの日々も憎かった。
父さんと呼ぶべき人も取り合ってくれなかった。信じるのは実の息子だ。
じゃあ私は誰に信じて貰えばいい?
きっと母が大好きだった。だからこそ信じて貰いたくて絶望までしたのだと思う。
絶望しても解決しないのは分かっていたよ。
けど、解決しないからと言ってどうすればいい?残された傷跡も恐怖も拭えはしないんだ。
ずっと、孤独感が消えなかった日々が確かにあった。