箱庭ラビリンス
「――……」
毎日毎日泣いてしまいそうだった。時間が逆回りしたようで、それならばナナギくんのいたあの時間にまで戻ればいいのにと思ってしまった。
思ったところで仕方ない事は分かっていたのに、あの日にあの時期に戻れれば私はきっと母の再婚に何が何でも反対していただろう。そして何事もなく今まで過ごすだろう。
ああ、でもそうすればナナギくんに出会っていなかったかもしれない。それは嫌だ。
なんて事を考えても意味はない。か……。
「!」
物思いに耽りながら家に到着すると、それと同じタイミングで鳴ったのは着信音。
ビクッと肩を上下させながらにディスプレイを確認する。
「……母さん」
現時点の母の自宅からの着信だった。菜穂姉は一応と言いながら番号を教えていて、私にも教えてくれていたのだ。今のこの時点まで使われる事はなかったが。
じゃあ、初めて使われた今どうするか。
想定していない事態に困惑すらしていない私。一気に気持ちが冷めて冷たくなるのだ。