光を背負う、僕ら。―第2楽章―
想いは巡る
外に出るたびに冷たい風が頬に触れると思っていたら、10月が終わろうとしていた。
季節と時間ばかりが進む中で、人は確実に変わっていく。
……この前、マリナちゃんが真藤君とは別の人と仲良さげに手を繋いで歩いているのを見掛けた。
真藤君が言っていたことは、正しかったのかもしれない。
そんな真藤君は相変わらずクールというかミステリアスで、あまり変化は見られない。
だけどあたしが気付いていないだけで、変わったところもあるのかもしれない。
他の人たちが受験に向けて、少しずつ意識が変わっているように。
それに引き換えてあたしと言えば、未だにお母さんを説得出来ていないままで……。
焦りと強くなる想いだけがいつも、時間を追い越すようなスピードで前に進もうする。
…そして、いつも空回り。
そんなぐだぐだとした日々の中で、あたしはずっと立ち止まっていた。
あたしと伸一の放課後の時間は、何も変わっていなかった。
「…あのさ、麻木。曲のリクエストがあるんだけど、弾いてもらえるか?」
「えっ?」
だけどそんな日々のある日、珍しく伸一から曲のリクエストを受けた。
伸一からのリクエストなんて初めてだから、なんだか不思議な感じがする。