光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「何それ!めっちゃすげーじゃん!
自分で曲とか作っちゃうとか、麻木すごすぎるって!!」
まるで子供が新たな発見をしたときのような清々しくてキラキラした笑顔が、ぐっとあたしに近付いてきた。
伸一、顔が近いよ…。
急接近されてどぎまぎするあたしとは違い、伸一はすっかり興奮していた。
「麻木ってピアノの才能があるなーとは思ってたけど、作曲と作詞なんてすごすぎるって!」
「そっ、そんなにすごいものじゃよ?曲だって無茶苦茶に弾いてるだけだし、歌詞も……歌詞っていうより詩って感じだし…」
「でも、すげーことには変わりねぇって!
…っていうか、さっそく聞かせてくれよ!早く麻木の曲が聞きたい!」
「…えっ、あぁ、うん。分かった」
気が付くと興奮状態の伸一に着々と背中を押されていて、真っ直ぐピアノに向き合っていた。
「あっ、ちゃんと歌も歌えよ?俺、曲と歌の両方が聞きたいから」
「えぇ!歌はちょっと……。あたし音痴で下手だから…」
伸一のペースに流されていたとはいえ、さすがに歌を歌うことだけは無理だった。
伸一の前で伸一のことを想って作った歌なんて、歌えるわけないよ…!
あの日に聞かれてしまったのも、不覚だったっていうのに。