光を背負う、僕ら。―第2楽章―
プリントに載っていたオリジナル曲の条件は曲の時間数やジャンル指定のことなどだけで、とにかく大雑把にしか書かれていない。
あくまでも、自分の感性で作り上げたオリジナル曲であることが、一番重視されるらしい。
だけど試験の前例がない分、簡単にオリジナル曲と言われてもどんな感じの曲を作ればいいのか分からない。
それに課題曲や自由曲の練習、筆記の勉強や面接対策のことなどを考えると、とにかく今は時間が足りない。
何か一つのことに時間を費やすことはおろか、お母さんを説得することさえままならない状況だった。
「どうしたらいいんだろう…」
机に肘をついて、両手で顔を覆った。
だけどそれで今の状況が解決するわけでもなく、逆に自分で作った暗闇に引きずり込まれるような気分になる。
だから、逃れるように顔を上げた。
……こんなことしてたって、何にも解決しない。
とりあえずは、課題曲と自由曲の練習を始めよう。
あとは筆記の勉強をして、面接の練習は先生にしてもらおう。
まずは、今の自分に出きることから始めなくちゃ。
ただでさえ、時間がないんだから。
あたしはプリントを机の引き出しにしまうと、さっそく練習を始めるために一階へと向かった。
不安が全てなくなったわけでもない。
どうやったら取り除けるのかも知らない。
――でも。
不思議なことに、前よりも少し前向きになった自分がいるような気がした。
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