光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「……おまえ、何で泣かねぇの?泣きそうな顔してるくせに」
「……えっ?」
伸一の姿が消えてしまった扉を名残惜しい気持ちで見つめているなかで声をかけられて、反応に少し遅れてしまった。
いつの間にかあたしの隣に立っていた真藤君が、じっとあたしを見つめている。
そうしている最中にも、心の内まで見透かされている気がしてならない。
「な、何言ってるの?あたしが泣く理由なんて何もないじゃない。……意味が分からないよ」
……本当は、今すぐにでも泣いてしまいたい。
だけどそれは真藤君がこの場にいなかったらの話であって、こんな状況では泣きたくても泣けない。
真藤君には早くいなくなってほしい気持ちしか浮かんでこなくて、偽りの笑顔を振りまいて嘘をつくことにした。
荷物を片付けるフリをして真藤君に背中を向けて、嘘を見破られないように細心の注意を払う。
「そ…それより真藤君、日直の用事はもういいの?もうすぐ下校時間になっちゃうよ?」
「………」
「あたしも帰るところだし、真藤君も早く……」
「――おい。嘘なんて俺には通用しねぇよ。麻木だって分かってるだろ?」
「……っ!?」
あたしよりも大きな影が体に覆い被さって気配が近付いたと思ったときにはもう、勢いよく腕を引かれていた。