光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「佐奈はいつも、不安になると下ばっかり見てるよね?
……あたし、それは意味ないことだと思う。だって、下に不安を取り除くことが出来る道具があるわけじゃないもん。
だったら、上とか前を向いて方がいいと思わない?
前さえ見ていれば、歩いてる道の先が見える。上を向けば、光だって感じられる。
だったら、あたしはその方がいい。下ばかり見てたら、いつか見えるものさえ見えなくなっちゃうよ?」
顔を掴んでいる明日美の手の力が緩み、そっとあたしの顔から離れた。
あたしは手を離されても顔を下げることはなく、しっかりと明日美を見続ける。
…あぁ、友達だな。
こうやって思っていたことを素直に言ってくれるたび、心からそう思える。
だって、心配してくれている証だから。
「…ありがとう。
そうだよね。下ばっかり見てたって、意味ないもんね」
力が抜けたように椅子に座った明日美に笑いかけると、安心したように笑い返してくれた。
「流歌も、ありがとう」
「…ううん、あたしは何も出来てないよ」
流歌は勢いよく首を左右に振っていたけど、「そんなことない」とあたしは返した。
いつもはっきりとした態度で接してくれて、背中を押してくれる明日美。
落ち込んだり悩んだりしているときは、優しく相談に乗ってくれる流歌。
二人がいるから、あたしは頑張れる。