光を背負う、僕ら。―第2楽章―
厳しい現実
あの体験入学があった夏が、もう早くも遠い記憶へと変わっていく。
身に纏うものが夏服のカッターシャツから冬服のブレザーへと変わり、季節は止まることなく進んでいた。
それはある意味、選択の時が迫っているということでもあるけれど――。
「佐奈、今日どうする?」
「えっ、何が?」
帰りのSHRが終わって荷物をまとめている最中、明日美の言葉の意味が分からずにそう答える。
すると明日美は、少し躊躇った声で言った。
「ほら、昨日話してたじゃん。
部活の様子見に行こうって」
「あっ…あぁ。そういえば、そうだったね」
そんな約束をしていたことを思い出すと、少し鼻の奥が痛んで寂しい気持ちになる。
明日美の表情を盗み見ると、同じことを思っていたのかして影がさしているみたいだった。
――引退。
その言葉と共にあたし達が吹奏楽部から去ったのは、ほんの数日前のこと。
三年生にとって最後の活動になる文化祭での演奏会も無事に終わり、やるべきことは全てやりきった。
だけど今でも心に残る何かがあって、部活の話を口に出すといつも悲しい気持ちになる。