光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「…ピアノは、確かに家にもあります。……でも、ダメなんです。
ピアノを弾くことは、お母さんは許してくれました。でもまだ、東條学園に行くことは反対しています。
そんな状態では……家で思い切り弾くことが出来ないんです」
爪が手のひらに食い込んでしまいそうなぐらい、強く拳を握り締めた。
不思議なことに。
ピアノを弾けないときよりも、今の方が苦しいって感じてる。
リビングの、あの片隅に置かれたピアノを弾けば弾くほど、いつも嫌な視線を感じていた。
羨んでいるような、深い悲しみさえも帯びて。
表情の裏側であたしを冷ややかに見つめる、そんなお母さんの視線。
反対を押しきってピアニストになると誓った日から、ある程度こうなることは予測していた。
だけど、想像以上に辛い。
まるで、大好きなピアノさえ拒絶されているみたいだから…。
「わがままだって、迷惑なことを頼んでいることは分かってます!
…でもあたし、本気でピアノが練習したいんです。休み時間の間だけでいいです。
…っだから…、学校のピアノで練習させてください!!」
椅子で大きな音を立てながら立ち上がり、今度はその状態で深々と頭を下げた。