光を背負う、僕ら。―第2楽章―
先生は幾分も経たないうちに、ゆっくりと口を開く。
「…佐奈ちゃんらしい、答えね」
「……えっ…?」
恐る恐る顔を上げると、鈴木先生は少し困ったように笑っていた。
「佐奈ちゃん、とりあえず座りましょう?」
「あっ…はい…」
先生の言葉の意味も分からないまま、促されて椅子に座る。
すると先生は机に両肘をついて顔の前で手を組み、その上に自分の顎を乗せてにこりと笑った。
「いつかはね、こんな頼みをされるだろうなって思ってたの」
……はい?
未だに訳が分かっていないあたしに、先生はずっと笑いかけている。
「体験入学のとき、佐奈ちゃん、色々とお家やお母さんのことを話してくれたでしょう?」
「…はい、そうです」
だからこそ、先生に頼んだ。
「あのとき確か、ピアノを弾くことを禁止されてるって言ってたでしょう?
だから私、あれ以来色々と考えてたの。
東條学園を目指すのに、家でピアノの練習が出来ないのはきついんじゃないかなーって」
先生は自分が考えていたことを、ゆっくりと話してくれた。
あたしはそれを頷きながら聞き取る。