光を背負う、僕ら。―第2楽章―
あたしの問いかけに真藤君は少し驚いて目を見開いた。
でもすぐにフッと笑って、静かに話を続けた。
「……実は俺の父親、医者なんだよ」
「え、そうなの?」
「あぁ。ちなみに母親は、看護師やってる」
全然知らなかった……。
よく考えるとあたし、あまり真藤君のことを知らないかも。
でも、あれ…?
「お父さんがお医者さんなのに、そっちには興味ないの?」
真藤君は今度は驚くどころか、眉一つ動かさずに言う。
「親が医者だからこそ、だよ。
どういう職業か分かっているから、あえてなろうとは思わないんだ」
――とても力強く、芯が通った声だった。
これがきっと、真藤君の揺るぎない意志なんだ。
「…そっか」
とっさに思い浮かんだのは、ピアニストだったお母さんの姿。
あたしはお母さんがピアニストという職業だったからこそ、自分も同じ職業になりたいと思うきっかけが出来た。
だけど、真藤君は違う。
親がやっている仕事があったからこそ、それとは別の道を選んだ。
自分とはまるで正反対な真藤君の話は新鮮で、気付けば夢中になって耳を傾けていた。