光を背負う、僕ら。―第2楽章―
ソファーには、あたしの姿を見て苦笑いを浮かべるお母さんが座っている。
お母さんはあたしがピアノを練習するときはすぐそばに立っているけれど、作曲をしているときはいつもそこが定位置だった。
特に何かをアドバイスしてくれるわけでもなく、ただ様子を見守って、そして聞いているだけ。
今日も定位置でずっと耳を澄ましていたお母さんが、「困った」とでも言うように口を開く。
「うーん…。確かにどれも、いまいちなのよね」
お母さんの手元には、数枚の楽譜。
どれもあたしが曲を書き込んだものだ。
ただそうとは言っても、自分自身で「ダメ」だと感じたものばかり。
ある程度書けたものはいつも一応お母さんに見せているけど、その反応はいつだって決まってる。
楽譜を見つめるお母さんの瞳は完全に“ピアニスト”で、やっぱり今日の反応もいつもと同じだった。
「やっぱり、どれもダメね。
演奏自体はだいぶ良くなってるけど、作曲はこのままだとまずいわよ」
焦りばかりが募る今は、誉め言葉さえもプレッシャーに思えた。