光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「えぇ、作曲してたわよ」
楽譜から目を離さずに、お母さんはそう言う。
「じゃあ、作曲のコツとか……」
「ないわよ」
えっ、と言うときの口の形を作ったまま固まる。ただし、声は出ないまま。
お母さんがにっこりと笑ってあたしを見た。
「コツなんて、ないわよ」
笑っているのに不気味に見えるのは、きっと無言の圧力を感じたから。
教えてくれない……ってことか。
それとも本当に、コツなんてないのかもしれない。
仕方なく「あはは、そうか」と苦笑いで返した。
するとお母さんの表情からは貼り付けた笑顔が消えて、代わりに本当の笑顔になった。
「佐奈。そんなに難しく考えなくたって大丈夫よ。あなたが好きなように弾いてたら、自然と作曲出来るものよ」
「うーん、そうは言ってもねぇ……」
好きなように弾けるなら、確かにあたしだって作曲出来る。
今までだってずっと、そうやって自分の感情をメロディーに変えてきたのだから。
……だけど。